運送業における労働力不足を解消するための方策の一つとして、政府は、2024年3月29日に外国人ドライバーの受け入れを閣議決定しました。【2024年4月8日 掲載】
2024年4月1日から、高速道路を走る大型トラックの最高速度が時速80キロから時速90キロに引き上げられました。【2024年4月26日 掲載】
2024年4月26日 掲載
2024年4月1日から、高速道路を走る大型トラックの最高速度が時速80キロから時速90キロに引き上げられました。
2024年働き方改革により、トラック運転手の残業規制が強化されたことを受けて運送業界では、人手不足が懸念されていますが、時速を上げれば、短時間でより長距離輸送が可能になり、トラック運転手の労働時間短縮にもつながると期待されています。
最高速度緩和により、運送業界にどのような影響が出ているのでしょうか。
高速道路を走る大型トラックの最高速度緩和の背景
高速道路を走る大型トラックの最高速度は、時速80キロに制限されていましたが、2024年4月1日から、時速90キロに引き上げる改正道交法施行令が施行されました。
2024年4月1日から、トラック運転手の残業規制が強化されたことに伴い、物流業界の人手不足が懸念されています。
その対応策の一つとして、業界団体からは、短時間でより長距離の輸送できるようにするため、大型トラックの最高速度の引き上げを求める要望が出されていました。
これを受けて、警察庁の有識者検討会が、時速90キロを上限とする速度抑制装置の装着義務化などで重大事故が減少傾向にあることなどから、大型トラックの最高速度を引き上げても「交通安全に大きな影響をもたらすとは考えられない」とする提言をまとめていました。
高速道路における時速緩和の試みとしては、新東名高速道路の御殿場ジャンクション(JCT)—浜松いなさJCT間において、6車線化工事が完成した2020年12月から、最高速度を時速120キロに緩和したことが有名です。
時速緩和後、事故が増加することが懸念されていましたが、静岡県警のまとめでは、2020年12月からの半年間で同区間の事故件数が273件にとどまり、運用前の半年間と比べて104件(27.6%)減少しました。
こうしたことから、トラックの最高速度の引き上げを行っても問題ないと考えられたわけです。
ただ、警察庁が実施したパブリックコメント(意見公募)では、事故が重大化することの懸念の声も寄せられていました。
最高速度緩和の対象となるトラック
最高速度緩和の対象となるのは大型トラックと中型トラックの一部(総重量8トン以上)です。
トレーラーは対象外なので注意してください。警察庁の有識者検討会では、トレーラーの最高速度の引き上げも議論されましたが、開発段階で時速80キロを超える速さでの走行試験が実施されていないことなどを理由に見送られました。
最高速度緩和による現場への影響
最高速度が引き上げられることにより、大型トラックの運転手は、これまで以上に慎重な運転が求められるようになります。交通事故だけでなく、荷崩れなどの輸送事故の発生も増える可能性もあります。
また、最高速度が時速80キロから時速90キロに引き上げられたことにより、荷主が、「これまでよりも早く荷物が到着するはずだ」と単純に考える可能性があります。
しかし、荷物が到着する時間が早まるとは限りません。
現時点でも、高速道路を走る大型トラックの実勢(実際の速度)は時速87キロは出ているとのデータも紹介されており、現状を追認しただけとの声もあります。
つまり、緩和されたからと言って、輸送速度が速まることにはならないケースがほとんどだと思われます。
そうした実態を知らずに、荷主からこれまでより早く荷物を届けるようにとのプレッシャーをかけられてしまうと、現場のトラック運転手の精神的負担が重くなるだけでなく、働き方改革に逆行するのではないかとの懸念もあります。
社内速度は80キロのままで変えない会社も多い
すでに大型トラックの最高速度緩和は実施されていますが、4月末の時点で大きく変わったという声は少ないです。
最高速度が90キロに緩和されても、安全性を重視して社内では80キロを維持するという会社が多いためです。
時間換算で運賃契約を締結している場合、スピードを上げて運行時間を短くすると運賃が安くなってしまうという事情もあるようです。
一方で、時速90キロを超えるスピードで走っている大型トラックも見受けられるという声もあり、今後、時速90キロが当たり前になっていくと、多くの運送会社が追従せざるを得なくなるかもしれません。
この場合、輸送スピードを上げたのに運賃が安くなってしまう可能性もあるため、契約内容の見直しも検討する必要があります。
特定技能1号での外国人ドライバー受け入れが始まれば、トラック運転手不足は緩和される可能性があります。
ただ、外国人ドライバーならば、日本人よりも安く雇えるし、雇いやすいと言う状況にはなるわけではありません。
外国人ドライバーはもちろん、日本人ドライバーからも選ばれるように労働環境を整備するとともに、運送業関係の法令遵守も徹底しましょう。
現時点で、ほとんどの運送会社で、高速道路での大型トラックの最高速度が時速90キロに緩和されたことによる影響は受けていません。
ただ、早速、時速90キロまたはそれを超えるスピードで走行する大型トラックもあるとのことなので、今後は、時速90キロが標準になっていく可能性もあります。
この場合、荷主との運送契約を見直すなどして、運賃の下落を防ぐことも検討すべきです。
運送契約の見直しなどでお困りのことがあれば、運送業専門の行政書士などに相談してください。
参考サイト
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/0d3444dcf7b5a2507444af9274041a7d46507ee6
https://www.yomiuri.co.jp/national/20210817-OYT1T50110
2024年4月8日 掲載
運送業界は2024年働き方改革により、トラック運転手不足に悩まされている企業が増えています。
そんな中、政府は、トラック運転手不足解消の手段の一つとして、特定技能1号により外国人ドライバーを受け入れる方針を決定しました。
ただ、外国人ドライバーなら日本人ドライバーよりも雇いやすいわけではなく、日本人同等の待遇が必要ですし、選ばれるためには、運送業許可を取得するなどの法令遵守を徹底する必要があります。
深刻なトラック運転手不足に直面する運送業
運送業界は、2024年の働き方改革により、トラック運転手の労働時間を短縮する動きが出ています。
これまで、運送業界はトラック運転手の長時間労働により支えられていた面がありましたが、今後は、労働基準法に則った適正な働き方が求められます。
そのために、運転手不足が深刻になり、輸送力の低下が懸念される「2024年問題」が顕在化しつつあります。
特定技能の分野に「自動車運送業」の追加が決定
運送業における労働力不足を解消するための方策の一つとして、政府は、2024年3月29日に外国人ドライバーの受け入れを閣議決定しました。
具体的には、今後の5年間で最大2万4500人の外国人ドライバーを「特定技能1号」資格で受け入れる計画です。
特定技能とは、国内で人材を確保することが難しい産業分野において、一定の専門性や技能を有する外国人を受け入れることで、人手不足を解消するための制度です。
特定技能1号は、通算で5年を限度に生活や業務に必要な日本語能力を有する外国人に認められる在留資格です。特定技能2号は、在留期間の更新に上限がなく、家族を帯同して在留できる資格です。
これまで、特定技能で受け入れ可能な産業分野は、介護、建設業、農業等12分野に限られていました。運送業に関係ある分野としては「自動車整備」も含まれていました。
トラックの整備先で外国人の従業員を見かけたこともあったのではないでしょうか。
今後は、「自動車運送業」も追加されます。
対象となるのは、バス、タクシー、トラックの運転手ですが、主に受け入れの対象となるのは、トラックの運転手と見られています。
2024年4月1日以降、トラック運転手不足問題で頭を抱えている運送業の方も多いと思いますが、特定技能1号の対象が「自動車運送業」にも拡大されたことは、解決策の一つになる可能性があるので注目してみてはいかがでしょうか。
特定技能1号で外国人ドライバーを受け入れるには?
運送業を営む企業が、実際に外国人労働者を受け入れるためには、一定の基準を満たしていなければなりません。
まず、注意したいことは、外国人労働者であっても、待遇は日本人と同等以上のものでなければならない点です。
そのうえで、次の4つの基準をクリアしなければなりません。
外国人労働者と適切な雇用契約を締結すること。5年以内に出入国関連や労働関連の法令違反等がないこと。外国人が理解できる言語でコミュニケーションが取れるなどの支援体制を整えること。1号特定技能外国人に対する支援内容が適切であること。
支援内容とは、日本での生活全般の支援を含みます。つまり、会社で働いているときだけでなく、私生活の面でも支援が必要ですし、日本語の習得や生活慣習に慣れさせるように支援しなければなりません。
加えて、出入国在留管理庁への各種届出もその都度必要になります。
もちろん、運送業を営む企業がこれらの全てに対応しなければならないわけではありません。
まず、外国人の日本での生活や言語の支援については、「登録支援機関」に委託することもできます。
また、出入国在留管理庁への各種届出は、行政書士等の専門家に依頼することができます。
運送業を営む企業が、最低限やらなければならないことは、
適切な雇用契約を締結すること。法令を遵守すること。
この2点に絞られます。
特定技能1号で外国人ドライバーを受け入れるには運送業許可も必要
上記で紹介した「法令を遵守すること」には、貨物自動車運送事業法などの運送業関係の法令を遵守することも含みます。
トラック運転手不足が深刻化する中、外国人ドライバーでも、人材の取り合いになることが予想されます。つまり、外国人ドライバーも労働条件の良い会社を選べる状況にあるため、外国人ドライバーから選ばれるように、必要な運送業許可することは必須と言えます。
特定技能1号での外国人ドライバー受け入れが始まれば、トラック運転手不足は緩和される可能性があります。
ただ、外国人ドライバーならば、日本人よりも安く雇えるし、雇いやすいと言う状況にはなるわけではありません。
外国人ドライバーはもちろん、日本人ドライバーからも選ばれるように労働環境を整備するとともに、運送業関係の法令遵守も徹底しましょう。
出典
https://news.yahoo.co.jp/articles/3af9156d9fa81dd9d981414eb59bdb5f4518d31d
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20240329-OYT1T50069/
https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/index.html
https://www.jitco.or.jp/ja/skill/