国土交通省は、令和6年3月に、運賃水準を8%引き上げるとともに、荷役の対価等を新たに加算するなどの標準的運賃の見直しを行いましたが、トラックドライバーの賃上げにつながるかどうかが注目されています。
国土交通省は、2023年7月にトラックGメンという組織を設けて、荷主企業・元請事業者の監視を強化しています。
2024年4月1日から、高速道路を走る大型トラックの最高速度が時速80キロから時速90キロに引き上げられました。
運送業における労働力不足を解消するための方策の一つとして、政府は、2024年3月29日に外国人ドライバーの受け入れを閣議決定しました。
2024年5月13日 掲載
標準的運賃は、貨物自動車運送事業者が自社の適正な運賃を算出し、
荷主との運賃交渉に臨むにあたっての参考指標となるものです。
国土交通省は、令和6年3月に、運賃水準を8%引き上げるとともに、
荷役の対価等を新たに加算するなどの標準的運賃の見直しを行いましたが、
トラックドライバーの賃上げにつながるかどうかが注目されています。
①標準的な運賃とは?
物流業界では、荷主が圧倒的に強いため、
運送会社は下請けの立場に甘んじざるを得ないことが多く、運賃の値上げ交渉を持ち掛けることなど難しいのが実情です。
一方で、2024年の働き方改革に伴い、賃上げを含むドライバーの待遇改善が求められています。
そこで、国土交通省では、
下請けのドライバーや運送会社が運賃の値上げ交渉を行いやすいように参考値として標準的な運賃を示しています。
標準的な運賃は、貨物自動車運送事業法1条の3に基づいて、国土交通大臣が定めるものです。
狙いとして次の点が列記されています。
・トラック運転者の労働条件改善
・一般貨物自動車運送事業の健全な運営を確保
・貨物流通の機能の維持向上を図る
これらの目的のために、
一般貨物自動車運送事業の能率的な経営の下における適正な原価及び適正な利潤を基準に定めるのが、標準的な運賃です。
②標準的な運賃に満たない運賃による運送契約は無効なのか?
貨物自動車運送事業法には、
標準的な運賃に満たない運賃による運送契約が締結されている場合の契約の効力について、特に定めはないため、有効です。
ただ、不当に安い運賃を設定しているために、輸送の安全確保に支障が生じているような場合は、
貨物自動車運送事業法附則1条の2に基づき、
国土交通大臣から荷主への要請や勧告をするとともにその旨を公表することもできると解されます。
その点において、国土交通省が定める標準的な運賃には一定の意味があると言えます。
③ 2024年(令和6年)3月に告示された新たな標準的な運賃とは?
国土交通省は、令和2年4月に告示した標準的運賃の見直しを進めていましたが、
2024年(令和6年)3月に新たな標準的運賃を告示しました。
運賃水準を8%引き上げるとともに、荷役の対価等を加算している点が注目されています。
具体的な見直しの方向性は次の(1)~(4)とおりです。
(1)運賃水準の引き上げ
運賃水準の引き上げ幅を提示することで、運送にかかる費用を荷主に負担させることを狙いとしています。
具体的には、
・運賃表を改定し、平均約8%の運賃引上げを行う。
・原価のうちの燃料費を120円に変更し、燃料サーチャージも120円を基準価格に設定する。
といった見直しが行われました。
運送原価は、人件費(41.4%)、燃料油脂(16.3%)、修繕費(6.8%)、車両等の減価償却費(6.7%)で7割を占めていますが、
いずれの項目も物価高の影響もあって、値上がりしていることから、運賃引上げを行いました。
また、燃料価格も120円/Lを超えていることから、従来の100円/Lから値上げしました。
(2)荷待ち・荷役等の対価について標準的な水準を提示
トラックドライバーは、
長時間の荷待ちや契約にない荷役作業などの附帯業務を強いられることが多いものの、
適切な待機時間料や荷役料金を受け取れていない実態があります。
そこで、待機時間料を改正し、新たに荷役作業等に係る対価の項目が設けられました。
具体的には次のとおりです。
・30分ごとの待機時間料として、小型車は1,670円、中型車は1,760円、大型車は1,890 円、トレーラーは2,220円に設定。
・荷役作業ごとの「積込料・取卸料」を加算。フォークリフト・ユニックを使用して行う荷役作業及び手積み・手卸しによる荷役作業に係る30分ごとの対価を設定。
また、標準運送約款でも、運送と運送以外の業務を別の章に分離し、荷主から対価を収受する旨を明記。
・荷待ち・荷役作業等時間2時間以内ルールを徹底するために、2時間超の荷待ち・荷役作業等について、
時間外労働の割増賃金率(5割以上)を参考に、合計2時間を超えた場合について、割増率を5割と設定。
※荷待ち・荷役作業等時間2時間以内ルールとは
物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドラインにおいて、「荷主事業者は、荷待ち、荷役作業等にかかる時間を計2時間以内とする。その上で、荷待ち、荷役作業等にかかる時間が2時間以内となった、あるいは既に2時間以内となっている荷主事業者は、目標時間を1時間以内と設定しつつ、更なる時間短縮に努める。」と定められています。
https://www.meti.go.jp/press/2023/06/20230602005/20230602005.html
https://www.meti.go.jp/press/2023/06/20230602005/20230602005-1.pdf
(3)荷待ち・荷役等の対価について標準的な水準を提示多重下請構造の是正等
貨物運送業では、中小事業者を中心に3次以上の多重下請構造になっているケースが少なくありません。
この構造では、末端のトラック運転手が適正運賃を受け取れないことが問題になっています。
また、標準的な運賃は、実運送事業者が収受すべき運賃水準として定められているにもかかわらず、
下請けに発注する際の手数料が考慮されていませんでした。
そこで、下請けに発注する際の手数料について、「利用運送手数料」として設定するとともに、
契約条件の明確化のために荷主、運送事業者双方が運賃・料金等を記載した電子書面を交付することを明記しました。
(4)多様な運賃・料金設定等
共同輸配送によるドライバーの労働時間短縮、荷主の要望の多様化など現場の実態に合わせて、
多様な運賃・料金設定を反映させました。具体的には次の1~3とおりです。
1.共同輸配送等を念頭に、「個建運賃」を設定
貨物自動車運送事業者が契約している運賃体系は、約60%が「貸切(距離制・時間制)」となっていますが、
貨物量に応じた「個建運賃」を適用している貨物運送事業者もいます。
複数の荷主からの貨物を混載し、共同輸配送を行うことも、ドライバーの労働時間短縮のために有効とされていることから、
新たに、個建運賃による運賃も標準的な運賃に示しました。
2.荷主の希望する配送日時に合わせた運賃の設定
荷主が有料道路を利用する前提で通常見積もられる運送日時よりも短い日時での運送を希望した場合は速達割増、
荷主が十分なリードタイムを確保可能な配達を希望する場合には割引運賃というように、
柔軟な運賃設定ができるように速達割増等の考え方について示しました。
3.特殊車両割増の設定
現行の標準的な運賃では、冷蔵車・冷凍車のみ、特殊車両割り増し水準が示されていましたが、
新たに、海上コンテナ車、ダンプ車、タンク車など多様な特殊車両についても、特殊車両割り増し水準を示しました。
④荷主との運賃交渉は標準的な運賃を基準とすべき
貨物自動車運送事業者が荷主との運賃交渉を行う際は、
国土交通省が示した標準的な運賃を基準とするのが基本と言えます。
しかし、交渉力の弱い貨物自動車運送事業者の中には、標準的な運賃よりも低額で仕事を受ける業者もおり、
標準的な運賃を基準として運送契約を締結しにくい実態もあります。
国土交通省の収受運賃実態調査結果~「標準的な運賃」との乖離~(令和4年度)によると、
標準的な運賃と同等以上に収受できている貨物自動車運送事業者は、令和4年度の時点で約15%にとどまっています。
しかし、標準的な運賃を無視した値下げを行うことは、
自社の経営を圧迫することになりますし、ドライバーの待遇改善にもなりません。
国土交通省が、トラックGメン制度を運用するなど、
トラックドライバーの待遇改善に向けて本腰を入れている今こそ、標準的な運賃を基準とするチャンスと言えるのではないでしょうか。
参考
収受運賃実態調査結果~「標準的な運賃」との乖離~(令和4年度)14ページ
https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001627862.pdf
⑤標準的な運賃の見直しに伴い運賃を変更した場合の手続き
貨物自動車運送事業者が、標準的な運賃の見直しに伴い運賃を変更した場合は、
運賃及び料金の種類、額並びに適用方法等について、所定の届出を行う必要があります。
ただ、令和2年4月24日告示の標準的な運賃にて届出している場合で、
見直し後の標準的な運賃を適用する場合は、
令和6年3月22日告示の標準的な運賃にて届出たものとみなされるため、特別な届出は必要ありません。
運賃等について届出が必要なのかどうかわからない場合は、運送業専門の行政書士にご相談ください。
参考通達
https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001732622.pdf
2024年5月5日 掲載
物流業界では、荷物の配送を依頼する荷主の力が圧倒的に強く、運送会社は下請けの立場に甘んじざるを得ない構造になっています。
2024年4月からトラックのドライバーの働き方改革に伴い、運送会社が利益を出していくためには、荷主と適正な取引を行える環境が必要です。
しかし、2024年4月の働き方改革が始まるからと言って、物流業界の関係者の意識がそう簡単に変わるものではありません。
そこで、国土交通省は、2023年7月にトラックGメンという組織を設けて、荷主企業・元請事業者の監視を強化しています。
①トラックGメンの権限
トラックGメンは、国土交通省の職員162名体制で全国で活動しています。
荷主・元請事業者等による違反原因行為が行われているとの情報を得た場合には、その荷主・元請事業者等に対して「働きかけ」を行い、改善を促します。
「働きかけ」に対して、荷主・元請事業者等が改善しない場合は、荷主・元請事業者等が違反原因行為をしていることを疑う相当な理由があるものとして、改善するように「要請」を行います。
この「要請」に対しても、改善がなされない場合は、更に強い「勧告」や違反原因行為をしていることを「公表」するといった処置が講じられます。
また、荷主・元請事業者等の行為が独占禁止法違反に当たる場合は、公正取引委員会に通知するものとされています。
トラックGメンのこうした権限は、貨物自動車運送事業法付則第1条の2に基づくものです。
付則に置かれた規定に基づくもので、トラックGメンの権限も「当分の間」という臨時的なものに過ぎません。
また、トラックGメンの要請に応じなくても罰則等はなく、「公表」されてしまうという不都合くらいしかありません。
ただ、現時点で、トラックGメンの活動は一定の成果を上げています。
②2024年3月31日までのトラックGメンの活動の成果
トラックGメンの活動は発足以来、活発化しており、2023年11月、12月には集中監視月間をもうけて、監視を強化しました。
この期間だけで、全国で164件 の「要請」と47 件の「働きかけ」を実施。さらに、勧告を2件、行っています。
勧告を受けた企業は公表されていますが、ヤマト運輸株式会社と王子マテリア株式会社の2社です。大手企業に対しても容赦なく勧告を行っており、国土交通省が本気で取り組んでいることがわかるのではないでしょうか。
2024年3月31日までのトラックGメンの活動実績は次のとおりです。
勧告
2件(荷主1件、元請1件)
要請
174件(荷主88件、元請81件、その他(倉庫等)5件)
働きかけ
478件(荷主310件、元請158件、その他(倉庫等)10件)
参考
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk4_000116.html
③トラックGメンに指摘された違反原因行為
トラックGメンに指摘された違反原因行為は次のような行為です。
長時間の荷待ち
53.5%
契約にない附帯業務
14.8%
運賃料金の不当な据え置き
13.2%
無理な運送依頼
8.3%
過積載運行の要求
6.5%
異常気象時の運行指示
3.7%
トラックGメンの活動実績を見ても、長時間の荷待ちがもっとも問題になっていることが分かります。
朝受付しても、伝票発行や積み込みが、15時、18時といった事例や午前中の指定時間に合わせて到着しても、荷卸しが始まるのが13時、15時と言った事例、荷卸しできる見込みがないために荷物を持ち帰ったという事例も報告されています。
物流現場では、トラックは待たせておくのが当たり前という意識がまだ残っていることが伺えます。
長時間の荷待ちは、トラックドライバーの労働時間の長期化に繋がる上に、働き方改革の実施の上で妨げとなるため、早期の是正が求められるところです。
契約にない附帯業務をやらされるという事例も目立ちます。
例えば、積荷の手卸し後、積荷の仕分けとラベル貼りと言った作業をトラックのドライバーにやらせている事例が報告されています。契約にはこうした業務もやる旨が書かれていないため、ドライバーにこうした業務をやらせないように要請しても取り合ってもらえなかったようです。
トラックGメンは、トラックドライバーや運送会社からこうした情報を受け取ったときは、個別にヒヤリングを実施し、問題があると判断した場合は、「働きかけ」や「要請」を行っています。
④トラックGメンへの通報先
トラックドライバーや運送会社が、荷主や元請けによる違反原因行為に悩んでいる場合は、今すぐに、全国各所の相談窓口または目安箱からトラックGメンへ通報することができます。
通報先リンク
https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001739691.pdf
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk4_000043.html
⑤トラックGメンに通報すべきか迷ったら運送業専門の行政書士に相談しましょう
トラックGメンは運送会社にとっては強い味方と言えます。
ただ、荷主や元請業者と長年取引関係にあり、関係がこじれてしまうと仕事がもらえなくなることを恐れて、トラックGメンへの通報やヒヤリングに応じることをためらう運送会社も多いと思います。
しかし、物流業界の今後を考えるとトラックGメンへの通報をやめたり、聞き取り調査に対してウソの回答をすることは好ましいことではありません。
トラックGメンに通報したことや回答した内容が、荷主や元請業者に漏れることは基本的にはありません。
そのため、違反原因行為があれば通報し、ありのままの状況をトラックGメンに伝えるのが正しい対応です。
ただ、下請けの立場にある運送会社としては、トラックGメンに通報すべきか本当のことを伝えるべきかためらうこともあると思います。
どうすべきか判断に迷ったときは、運送業専門の行政書士に相談してください。
御社の立場や状況を踏まえたうえで、荷主や元請業者への対応やトラックGメンとのやり取りについてアドバイスさせていただきます。
2024年4月26日 掲載
2024年4月1日から、高速道路を走る大型トラックの最高速度が時速80キロから時速90キロに引き上げられました。
2024年働き方改革により、トラック運転手の残業規制が強化されたことを受けて運送業界では、人手不足が懸念されていますが、時速を上げれば、短時間でより長距離輸送が可能になり、トラック運転手の労働時間短縮にもつながると期待されています。
最高速度緩和により、運送業界にどのような影響が出ているのでしょうか。
①高速道路を走る大型トラックの最高速度緩和の背景
高速道路を走る大型トラックの最高速度は、時速80キロに制限されていましたが、2024年4月1日から、時速90キロに引き上げる改正道交法施行令が施行されました。
2024年4月1日から、トラック運転手の残業規制が強化されたことに伴い、物流業界の人手不足が懸念されています。
その対応策の一つとして、業界団体からは、短時間でより長距離の輸送できるようにするため、大型トラックの最高速度の引き上げを求める要望が出されていました。
これを受けて、警察庁の有識者検討会が、時速90キロを上限とする速度抑制装置の装着義務化などで重大事故が減少傾向にあることなどから、大型トラックの最高速度を引き上げても「交通安全に大きな影響をもたらすとは考えられない」とする提言をまとめていました。
高速道路における時速緩和の試みとしては、新東名高速道路の御殿場ジャンクション(JCT)—浜松いなさJCT間において、6車線化工事が完成した2020年12月から、最高速度を時速120キロに緩和したことが有名です。
時速緩和後、事故が増加することが懸念されていましたが、静岡県警のまとめでは、2020年12月からの半年間で同区間の事故件数が273件にとどまり、運用前の半年間と比べて104件(27.6%)減少しました。
こうしたことから、トラックの最高速度の引き上げを行っても問題ないと考えられたわけです。
ただ、警察庁が実施したパブリックコメント(意見公募)では、事故が重大化することの懸念の声も寄せられていました。
②最高速度緩和の対象となるトラック
最高速度緩和の対象となるのは大型トラックと中型トラックの一部(総重量8トン以上)です。
トレーラーは対象外なので注意してください。警察庁の有識者検討会では、トレーラーの最高速度の引き上げも議論されましたが、開発段階で時速80キロを超える速さでの走行試験が実施されていないことなどを理由に見送られました。
③最高速度緩和による現場への影響
最高速度が引き上げられることにより、大型トラックの運転手は、これまで以上に慎重な運転が求められるようになります。交通事故だけでなく、荷崩れなどの輸送事故の発生も増える可能性もあります。
また、最高速度が時速80キロから時速90キロに引き上げられたことにより、荷主が、「これまでよりも早く荷物が到着するはずだ」と単純に考える可能性があります。
しかし、荷物が到着する時間が早まるとは限りません。
現時点でも、高速道路を走る大型トラックの実勢(実際の速度)は時速87キロは出ているとのデータも紹介されており、現状を追認しただけとの声もあります。
つまり、緩和されたからと言って、輸送速度が速まることにはならないケースがほとんどだと思われます。
そうした実態を知らずに、荷主からこれまでより早く荷物を届けるようにとのプレッシャーをかけられてしまうと、現場のトラック運転手の精神的負担が重くなるだけでなく、働き方改革に逆行するのではないかとの懸念もあります。
④社内速度は80キロのままで変えない会社も多い
すでに大型トラックの最高速度緩和は実施されていますが、4月末の時点で大きく変わったという声は少ないです。
最高速度が90キロに緩和されても、安全性を重視して社内では80キロを維持するという会社が多いためです。
時間換算で運賃契約を締結している場合、スピードを上げて運行時間を短くすると運賃が安くなってしまうという事情もあるようです。
一方で、時速90キロを超えるスピードで走っている大型トラックも見受けられるという声もあり、今後、時速90キロが当たり前になっていくと、多くの運送会社が追従せざるを得なくなるかもしれません。
この場合、輸送スピードを上げたのに運賃が安くなってしまう可能性もあるため、契約内容の見直しも検討する必要があります。
ただ、早速、時速90キロまたはそれを超えるスピードで走行する大型トラックもあるとのことなので、今後は、時速90キロが標準になっていく可能性もあります。
この場合、荷主との運送契約を見直すなどして、運賃の下落を防ぐことも検討すべきです。
運送契約の見直しなどでお困りのことがあれば、運送業専門の行政書士などに相談してください。
参考サイト
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/0d3444dcf7b5a2507444af9274041a7d46507ee6
https://www.yomiuri.co.jp/national/20210817-OYT1T50110
2024年4月8日 掲載
運送業界は2024年働き方改革により、トラック運転手不足に悩まされている企業が増えています。
そんな中、政府は、トラック運転手不足解消の手段の一つとして、特定技能1号により外国人ドライバーを受け入れる方針を決定しました。
ただ、外国人ドライバーなら日本人ドライバーよりも雇いやすいわけではなく、日本人同等の待遇が必要ですし、選ばれるためには、運送業許可を取得するなどの法令遵守を徹底する必要があります。
①深刻なトラック運転手不足に直面する運送業
運送業界は、2024年の働き方改革により、トラック運転手の労働時間を短縮する動きが出ています。
これまで、運送業界はトラック運転手の長時間労働により支えられていた面がありましたが、今後は、労働基準法に則った適正な働き方が求められます。
そのために、運転手不足が深刻になり、輸送力の低下が懸念される「2024年問題」が顕在化しつつあります。
②特定技能の分野に「自動車運送業」の追加が決定
運送業における労働力不足を解消するための方策の一つとして、政府は、2024年3月29日に外国人ドライバーの受け入れを閣議決定しました。
具体的には、今後の5年間で最大2万4500人の外国人ドライバーを「特定技能1号」資格で受け入れる計画です。
特定技能とは、国内で人材を確保することが難しい産業分野において、一定の専門性や技能を有する外国人を受け入れることで、人手不足を解消するための制度です。
特定技能1号は、通算で5年を限度に生活や業務に必要な日本語能力を有する外国人に認められる在留資格です。特定技能2号は、在留期間の更新に上限がなく、家族を帯同して在留できる資格です。
これまで、特定技能で受け入れ可能な産業分野は、介護、建設業、農業等12分野に限られていました。運送業に関係ある分野としては「自動車整備」も含まれていました。
トラックの整備先で外国人の従業員を見かけたこともあったのではないでしょうか。
今後は、「自動車運送業」も追加されます。
対象となるのは、バス、タクシー、トラックの運転手ですが、主に受け入れの対象となるのは、トラックの運転手と見られています。
2024年4月1日以降、トラック運転手不足問題で頭を抱えている運送業の方も多いと思いますが、特定技能1号の対象が「自動車運送業」にも拡大されたことは、解決策の一つになる可能性があるので注目してみてはいかがでしょうか。
③特定技能1号で外国人ドライバーを受け入れるには?
運送業を営む企業が、実際に外国人労働者を受け入れるためには、一定の基準を満たしていなければなりません。
まず、注意したいことは、外国人労働者であっても、待遇は日本人と同等以上のものでなければならない点です。
そのうえで、次の4つの基準をクリアしなければなりません。
外国人労働者と適切な雇用契約を締結すること。5年以内に出入国関連や労働関連の法令違反等がないこと。外国人が理解できる言語でコミュニケーションが取れるなどの支援体制を整えること。1号特定技能外国人に対する支援内容が適切であること。
支援内容とは、日本での生活全般の支援を含みます。つまり、会社で働いているときだけでなく、私生活の面でも支援が必要ですし、日本語の習得や生活慣習に慣れさせるように支援しなければなりません。
加えて、出入国在留管理庁への各種届出もその都度必要になります。
もちろん、運送業を営む企業がこれらの全てに対応しなければならないわけではありません。
まず、外国人の日本での生活や言語の支援については、「登録支援機関」に委託することもできます。
また、出入国在留管理庁への各種届出は、行政書士等の専門家に依頼することができます。
運送業を営む企業が、最低限やらなければならないことは、
適切な雇用契約を締結すること。法令を遵守すること。
この2点に絞られます。
④特定技能1号で外国人ドライバーを受け入れるには運送業許可も必要
上記で紹介した「法令を遵守すること」には、貨物自動車運送事業法などの運送業関係の法令を遵守することも含みます。
トラック運転手不足が深刻化する中、外国人ドライバーでも、人材の取り合いになることが予想されます。つまり、外国人ドライバーも労働条件の良い会社を選べる状況にあるため、外国人ドライバーから選ばれるように、必要な運送業許可することは必須と言えます。
特定技能1号での外国人ドライバー受け入れが始まれば、トラック運転手不足は緩和される可能性があります。
ただ、外国人ドライバーならば、日本人よりも安く雇えるし、雇いやすいと言う状況にはなるわけではありません。
外国人ドライバーはもちろん、日本人ドライバーからも選ばれるように労働環境を整備するとともに、運送業関係の法令遵守も徹底しましょう。
出典
https://news.yahoo.co.jp/articles/3af9156d9fa81dd9d981414eb59bdb5f4518d31d
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20240329-OYT1T50069/
https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/index.html
https://www.jitco.or.jp/ja/skill/